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レビュー
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サイボーグ009 [カラー完全版] 1965 ベトナム編/ミュートス・サイボーグ編
SF人間ドラマの元風景。
サイボーグ009は、テレビドラマ版「仮面ライダー」の変身ブームをくぐってきた子どものぼくにとって、スケールの大きな舞台と一見派手な物語の中で、「改造人間」──ひいては、生命体としての人間、社会的動物としての人間の本質を説いてくれたかけがえのない作品です。中でも一番はじめに触れたのがベトナム編でした。非道な戦争に暗躍する"死の商人"に立ち向かうゼロゼロナンバーサイボーグの真の悲しみを知るには、もう少し時間が必要でしたが……。本人の意に反して身体を機械化されてしまった彼らが、石ノ森章太郎作品の登場人物が教えてくれたことは、間違いなくぼくの価値観形成に影響を及ぼしました。人の生命は有限。だからこそ愛しくある。かけがえがないのは、一人一人の生命、個性が自らの望む暮らしを送るということ。理不尽に踏みにじる存在に、人を愛する心を以てむかい撃つサイボーグたち。人間の手によって人間の尊厳を疎外するという図式はまさに現代そのもの。現代のコミック作品に間違いなく影響を与えたこの作品は、古典と呼ぶなかれ、実は現在進行形の世界を映し出しているのです。ぜひご一読あれ。(2012/07/20)
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