大絶画さんのページ
レビュー
-
法華経物語(岩波現代文庫 学術315)
法華経の古層
鳩摩羅什訳『妙法蓮華経』は『般若心経』の次ぎに日本で読まれたお経でしょう。しかし何度となく読み進めるとその内容や構成に違和感を覚えると思います。
本書は『妙法蓮華経』はもちろん他2種の漢訳、サンスクリット語原典はもちろんチベット語テキストなど各種テキストを比較して法華経の古層を明らかにしています。その過程で様々な経典をまとめ1つのテキストに構成されたことが明らかになります。
さて入門書とされる本書ですが、初心者向けに書かれているとはいえ上級者・研究者も満足できる内容になっています。既存の解説書では満足できない方におすすめです。(2024/04/28) -
孟子 全訳注
『孟子』読むなら
『孟子』は儒教の聖典・四書の一つであり、孔子と並ぶ聖人・孟子の言行録です。『論語』とともに読んで損はありませんが『論語』ほど現代語訳や解説書が充実していないのも事実です。
本書は集英社「全釈漢文大系」を底本としており訳者も日本を代表する中国哲学者であった宇野氏で現代語訳も確かです。構成は章ごとに書き下し文・現代語訳と続き、原文は章末に返り点付きでまとめて掲載されています。
(おそらく分冊にしないための工夫なのでしょうが)訳注がないのが気になりますが、一巻本で気軽に読めますし『孟子』を手に取ろうという方におすすめです。また同文庫には吉田松陰による解説『講孟箚記』も収録されていますので、合せて読むといいでしょう。(2024/04/16) -
不動明王(岩波現代文庫 学術285)
不動明王とは何者か
不動明王とは何者か。著者はインド文化に即しながら論じています。
その過程で日本文化に根付いた不動信仰、真言密教の豊穣さが余す所なく理解できるはずです。(2024/02/28) -
弥勒信仰 もう一つの浄土信仰
弥勒の浄土から弥陀の浄土へ
日本で「浄土」といえば阿弥陀如来の西方浄土を思い浮かべる方がほとんどだろう。しかしかつては弥勒菩薩の上生・下生思想(釈迦入滅後、56億7千万年後に弥勒が下天する)から生まれた弥勒の浄土信仰が存在した。
本書ではインドで発生し中国・朝鮮から日本に弥勒信仰が伝わったか、いかなる変遷を経て、法然・親鸞の阿弥陀信仰に取って代わられたかが手堅くまとめられている。
現代の信仰についてはまとめられていないが、その点は著者も述べるように宮田登著『ミロク信仰の研究』などでカバーできる。
厭離穢土(現世否定)とは異なる現世肯定を説いた弥勒信仰の魅力を堪能してほしい。(2024/02/26) -
道徳的人間と非道徳的社会
良心と権力
昨年(2023年)は10年に一度あるいは100年の一度の不祥事が次々と明らかになりました。
このような企業の不祥事が起こる度、成員の知識や権限が問題にされます。いわく「マニュアルが徹底されていなかった」「監査部門の機能していなかった」などです。そして「コンプライアンス教育を徹底する」「監査部門を強化する」など対策が行われます。しかしそのようなことで防止はできるのか。
そしてニーバーは個人は自分と同じように相手を理解できないし配慮もできない。また組織の強制力(権力)は個人の良心を容易く凌駕する。さらに指導者の良心が成員に暴力的に働くことがあると明らかにします。
ニーバーの分析に容赦はありません。しかし改善する努力そのものは評価しています。
ニーバーが1960年の序文でいうように本作には古くなった部分が多々あります。しかしその分析は古びておらず、もしかしたら個人と社会の相剋はいっそう強くなっているかもしれません。いま一度ニーバーの言葉に耳を傾けましょう。(2024/02/25)
復刊リクエスト投票
女性の深層
【著者】エーリッヒ・ノイマン
疑惑と行動 マルクスとフロイトとわたくし
【著者】エーリッヒ・フロム
ぜひ読みたいです。(2024/04/20)
人間における自由
【著者】エーリッヒ・フロム
みなさん書いていますが、『自由からの逃走』が版を重ねているので続編であり『正気の社会』へとつながるフロムの代表作である本作も復刊してほしいです。(2024/04/20)
フロイトと人間の魂(叢書・ウニベルシタス)
【著者】ブルーノ・ベテルハイム 著 藤瀬恭子 訳
フロイトの受容を通して人間理解を深めたいです。(2024/03/26)
中国古典文学大系43 儒林外史
【著者】呉敬梓 作 稲田孝 訳
できれば平凡社ライブラリーに収録してほしいです。(2024/03/22)
もっと見る